こんにちは!映画などのレビューを行っている旅狼のレビュー小屋です!
ずっと気になっていた話題の映画『海獣の子供』を今さらながら観に行ってきました! 米津玄師さんの主題歌がすごく素敵だったのと、アニメが好きということ、そして、公開したときから”なんとなく気になっていた映画。
「ひどい」という評判が結構多かったので心配だったのですが。。今回はそんな『海獣の子供』の感想・考察・解説を、原作未読、事前知識ほぼ0の状態で観た自分がお話します!
『海獣の子供』、気になっていたけど実際どうなの?『海獣の子供』観たけど意味わからなかった。。という方はぜひご覧ください!
サムネイル画像引用:海獣の子供 公式サイトより
『海獣の子供』とは?
原作漫画:五十嵐大介(小学館IKKICOMIX)
映画作成:STUDIO4℃
監督:渡辺歩
音楽:久石譲
主題歌:米津玄師『海の幽霊』
あらすじ
自分の気持ちを言葉にするのが苦手な中学生の琉花は、夏休み初日に部活でチームメイトと問題を起こしてしまう。母親と距離を置いていた彼女は、長い夏の間、学校でも家でも自らの居場所を失うことに。
そんな琉花が、父が働いている水族館へと足を運び、両親との思い出の詰まった大水槽に佇んでいた時、目の前で魚たちと一緒に泳ぐ不思議な少年“海”とその兄“空”と出会う。
琉花の父は言った――「彼等は、ジュゴンに育てられたんだ。」
明るく純真無垢な“海”と何もかも見透かしたような怖さを秘めた“空”。琉花は彼らに導かれるように、それまで見たことのなかった不思議な世界に触れていく。。
海獣の子供 公式サイト
映画『海獣の子供』の感想
まずは感想としてざっくりまとめます。
見た際の僕の状態は、原作未読、事前知識も『主人公の女の子がジュゴンに育てられた少年2人と出会う物語』程度です。見終えたときに率直な感想は
なんかすごかった。。
ですね!笑
観に行く前にレビューを見ると「★5」に近いか「★1」に近いか真っ二つに割れている印象。しかも、検索したら「ひどい」と出てくる。これが『海獣の子供』でした。
そして、実際に観て納得。間違いなく人を選ぶ作品だと感じました。
映画『海獣の子供』への僕の評価
少なくとも僕は「★5」側の感想を抱きました。ですが同時に、多くの方が書いているように、「一度で”理解する”こと」はほぼ不可能ではないかとも感じました。表現の仕方といい見せ方といい、かなり難解なんですよね。。
ですが、“感じる”ことはできたと思っています。「なんとなく”感じた”」という表現が一番適当ですね。
軽々しく「わかった」なんて言えない。そう思ってしまうほど、とても深い作品でした。そして、見終えてから日が経つにつれて、その深み・重みが心に沁みてくる感覚です。
見終えてすぐに「凄かったなぁぁ。。」と感じること作品や、そこから色々と考えてしまうことはあるのですが、この『海獣の子供』についてはそれはあまりありませんでした。観終わったときは、「ポカーン」、、とまではいきませんでしたが、「ほゎゎ。。」ってかんじ。笑
だからこそ、映画を観た重み・内容の濃さからくる実感が、時間が経つにつれて押し寄せてきている、そんな感覚です。
こんな感覚は初めてなので、これだけでも十分観た価値があったと思いました。
映画『海獣の子供』の考察と解説
以降、ネタバレに近いことも入ります。気にする方は読まないでください!
前半はついていけたけど、後半謎すぎ。
『海獣の子供』を見た人であれば、多くがそう感じたと思います。後半は一気に話が進んで、本当に哲学でしたね。笑
その中で僕が何を”感じた”か、という部分を、作品の考察・解説としてお話していきます。
作品のテーマ
『海獣の子供』のテーマは「大切なことは言葉にできない」です。そして、この大きなテーマの中でさらに表現したいこと、いわゆる小テーマみたいなものが、大きく分けて2つあるように感じました。
人と宇宙は似ている
1つ目は、「人と宇宙は似ている」ということ。
人も宇宙もわかっているようで、実際は何もわかっていないものという点で似ている。そして、“だからこそ”無限の可能性を秘めていると言いたいのではないでしょうか。
また、“全体の中の個”でありながら、”個として明確に存在している”みたいな、表裏一体の二面性みたいなものを持ち合わせているということも言いたいのではないかと感じました。
宇宙の中の地球は、「“宇宙”という全体の中の”地球”という個として」存在している。人間も、「“社会”という全体の中の”一人の人間”として」明確に存在している。地球は宇宙という空間があって、初めて存在している。人間も、社会があって初めて生きていける。こういう点が似ているのかもしれないと感じました。
口コミには
“個”としての存在を否定している
と指摘しているものもありました。
僕個人としては、否定どころかむしろ“個”として存在することもまた賛美されることだと言いたいのではないかと感じました。
生命の誕生
二つ目の小テーマは「生命の誕生」です。特に後半の『まつり』は、まさに「生命の誕生」を表現していたと感じました。「命の大切さ」と言い換えても良いかもしれません。
海のある星は子宮、隕石は精子
という表現は、命を育む「海」と、命を運んでくる「隕石」を子供を育む場である「子宮」と、子宮に子供のタネを運ぶ「精子」に結びつけていると思います。これは結構わかりやすいのではないでしょうか。
問題は、隕石を持つのが女の子の琉花で、海に育てられた海が男の子であるという点。つまり、表現されている比喩と性別が反対なのです。
僕はこれを、一人一人の人間は、もうすでに生命の誕生の場としてふさわしいということを言いたいのではないかと感じました。自ら子宮を有している琉花が隕石を持っており、自ら精子を有している海が海の中で育てられた。この二人が、新たな命を生み出すための権利や力を、すでに持っているということを表現していると思いました。
これが何を具体的に伝えたいか、まではちょっと答えを出せていないのですが、、「命をつくる人の尊さ」や「一人の人間の尊さ」といった点を表現したいのではないかと僕は考えています。
“感じ取ろうとする”姿勢がとても大切
「まったくもって意味がわからない」とおっしゃっている方々について。
申し訳ないですが、僕は正直、映画が悪いのではなく、その人の感受性や考える力、今まで見てきた作品の数と質が、この『海獣の子供』という作品を”感じる”ためのレベルに至っていないのではないか、と感じました。
確かに、何の前置きもなく出てきたアングラード(ロン毛の助手さん)やデデ(謎の老婆)の言い回しや表現の仕方は、とてもまわりくどく難解ではありました。しかし、場面場面に”何かを感じられるように”描写があったり、音の演出があったりしたと僕は感じました。
例えば、「人魂」は、「人の魂」や「人が亡くなったという事実」を表現している、「光る海の幽霊」は、「風や海が内包する”記憶”」や「自然が伝えたいことの塊」と僕は解釈しました。
一つ一つの事象とキャラの行動。これらが何を意味しているのかを考え、考察することこそが、この作品の魅力だとも言えるのではないでしょうか。
そういう意味では『エヴァ』に近いかも。。
考えさせる作品にしようと描いていると思う
この『海獣の子供』という作品は最初から「観る人に考えさせる」作品にしようというコンセプトだったのではないかと思います。明快な回答があるのではなく、ある程度の道筋を示し、その先は観て聴いた人それぞれの解釈に委ねる、それぞれの感じ方に任せる。そんなスタンスだと。
そう考えると、絵画に似ているかもしれませんね。本人は表現したいことを、本人が描く世界観で表現する。あとは、鑑賞する側がどう捉えるか。
サルバトール・ダリやパブロ・ピカソの作品は、一見すると、何を描きたいのかよくわからないものも多いです。ですが、「それは画家の才能がないからだ」という人はほとんどいないと思います。
僕の中では、『海獣の子供』もそれと同じ感覚です。だから、作品にはなんの問題もないんじゃないかな、と個人的には思います。
「観る人を選ぶ」というのは間違いない。
とは言っても、、エンディング後の描写(30分アニメならCパートと呼ばれる部分)に関してはこっちに振りすぎだと思いました。ぶっちゃけ、エンディング前で終わっても悪くはなかったと僕は感じました。笑
他にも、最後の最後でまわりくどい表現や、”無駄に”難しい言い回しを使っているなぁ、というシーンがあったのは事実だと思います。まとめ方に若干の無理矢理感も見られたと思います。
問題は詰め込みすぎな点だと思う
大切なことは言葉にできない人と宇宙は似ている生命の誕生
これらのテーマを、作者の方が言いたい・表現したいということは伝わってきました。しかし、『まつり』の難解さも含め、テーマを1つの作品に詰め込みすぎていたとも感じました。
「人と宇宙は似ている」と「生命の誕生」。内容が深いし、表現の仕方も抽象的かつ哲学的で、見ている側は理解が難しい。十分一つの作品で扱っても良いテーマだけに、それぞれを別の作品にして表現しても良かったのではないかと個人的には感じました。
この2つに加えて、全体のテーマとして「大切なことは言葉にできない」があって、途中に出てくる「風と海が運ぶ情報や記憶」とか「人はなぜ生き、これからどこへ向かうのか」とかも、作品を通してのテーマのようでしたからね。
言いたいことはよくわかるのだけれど、、詰め込みすぎかなぁ。。というのが、最終的な感想と評価ですね。
映画『海獣の子供』 作品全体の総評
色々とお話してきましたが、、作品全体としてみれば、とても”深い”ものだったと感じました。
はじめはあまり好きではなかった絵も、観終わる頃には全然違和感がなかったですし、声優さんを使わないことで出る素朴な雰囲気、より感じられる日常感も、僕はとても好印象でした。特に、主人公琉花の声を担当していた芦田愛菜さんの演技は、とても素晴らしいものだったと感じます。
「ドーン!」とくる衝撃はないが、じんわりと心に沁みてくる。そんな作品だと思います。
衝撃を与えてくるのではなく、心に沁みてくる分、その感じ方により個人差が出てくるとも言えるかもしれませんね。
映画『海獣の子供』 まとめ
ということで今回は、アニメ映画『海獣の子供』の感想や評価、考察や解説をお話してきました。
『海獣の子供』という作品の感想をまとめると、文字にはできないけど、とにかく凄いものを観た気がするになりますね! そして上述したように、日に日に映画で受けた様々なものが押し寄せ、沁みてくる感覚です。。まさに、「映画」という芸術作品を観た感覚。
ぜひあなたも一度、『海獣の子供』をご覧になってください!きっと、”あなただから感じるもの”があるはずですからね。
コメント