みなさんこんにちは! 小説などのレビューを行っている旅狼のレビュー小屋です!
今回は、「2023年のベスト本 TOP5」ということで、今年2023年に読んで特によかった本をご紹介します! 第5位から+αの本たちをランキング形式に本を紹介しつつ、僕の感想やおすすめポイントなどを簡単にまとめました。
個人的には今年2023年の読書生活の総決算かつまとめとして、このブログを見つけてくれたあなたにとっては、来年2024年、あるいはこれから読むのにオススメできる本として、この記事が参考になればと思います!
第5位 medium(相沢沙呼)
出会いのきっかけ
ずーーーっと表紙が気になっていた作品が、文庫サイズになっていたのでやっとこさ購入。
この表紙、遠田志帆さんという方のイラストで、『屍人荘の殺人』シリーズのブックカバーも担当されているのですが、めちゃくちゃ好きなんです。笑
感想
期待を込めて読み始める、まぁありそうな“霊媒探偵物”なのかなぁ、と思って読み進めつつ、日本の作品によくある男と女の関係も描いているのか〜って思っていたら、最後の章でまさかの展開よ…! 読み終えれば、なるほど、そういうことね、ってなる。これは本ならではのトリックでもあるなと感じたのも、おもしろいポイントですね!(映像にしても描きようはあるとは思いますが、本だからこそなのは間違いないと思います。)
なんと言ってもヒロイン城塚翡翠のキャラクターが、やはりこの作品の魅力です。霊媒による解決やトリックももちろん面白いですが、やはりキャラそのものの魅力が作品の魅力にも大きく影響するということをとても強く感じました。エピローグで少しだけ、翡翠の心の内が示唆されるのもよかったですね。人間らしいところとそうじゃないところのギャップ、みたいなのがとても魅力的。このキャラを描けるだけでも作者の力だと思うし、シリーズもの、人気作品というのは、結局キャラあってのもの、とも言えるよなーって気づけた気がします。ホームズとか、ポアロとか、そうですからね。
この順位の理由
そんなわけで、相沢沙呼さんの作品、そして城塚翡翠シリーズにも興味が湧いたきっかけになりました。
2023年の読んでよかった本No.1の『カッコーの歌』といい、現代にも素敵な作者がいるだって、自分の凝り固まった頭を柔らかくもしてくれたと思っています。
読みやすく、表紙のイラストも相まって読み始めるハードルも低いのではないかと思います。読書初心者の方にも強くオススメできる一作品です!
第4位 悲鳴伝(西尾維新)
出会いのきっかけ
読書好きを名乗るなら、西尾維新の作品は1冊くらいは読んでおかないとな、と手に取った作品。
シリーズものの第1巻ですが、レビューを見て「この一巻だけで完結している」「この一巻だけで十分」といったコメントが多くあったので、それを信じて読んでみました。
実際、この一巻だけでとてもオススメできますよ!
感想
読み終えて、「ああ、これが西尾維新の作品なのか」と感じました。もちろん本当にツウな人が読んだら、もっとこうだとかもっとああだとかあるのだと思うけれど、レビューを見た感じ、この作品もよく”西尾維新み”が出ているらしいから、多分この感性で大丈夫だと思う、思いたい。
なんて、ちょっぴり西尾維新っぽく感想を書いてみたわけですが(笑)、西尾維新ならではの描き方、僕は結構しっくりきました。言葉遊びとかもすごく何気ない感じなのが好きだし、確かに読む人によっては冗長に感じるっていうのもわかったのですが、僕はそれも込みで楽しめたと思います。テンポが良いと感じたんですよね〜。
最初はその厚さにビビっていたのですが、改行が多いせいか、それともこのテンポの良さのせいか、読み終えてみると「本当にこのページ数なのか⁈」と感じました。それくらい、勢いよく読み進めることができたということ、それだけ物語の世界に没頭できたってことだと思うし、楽しんでいたのだと思います。
この順位の理由
純粋に物語としておもしろい、個人的にすごく好きな展開、そして何より、主人公の空々空くんの“特質性”が自分と重なりすぎて、ものすごくしっくりきたのです。ホント、びっくりするくらいに。自分の“ズレ”みたいなものの答えを出してくれた感覚で、その衝撃が本当に凄まじかった…!
なので、この順位なのは結構個人的な価値観からという印象です。ただ面白いなら他にも良い物語を読みましたが、「僕自身が自分のことを知ることができた」ということ、これがこの本の最大の価値になっています。
とはいえ、この空々くんと自分について衝撃と、内容の面白さ、キャラクターの魅力、キャラの名前とキャラクター性、最後の展開、そのすべてにおいて、とても満足できる面白い物語だったと自信をもって言えます。西尾維新を知っていようといまいと、物語として素直にオススメしたい作品なのは間違いありません!
惜しい…!
ベスト3に入る前に、「惜しくも今年のベスト5には入れなかったけれど、本当は入れたかった…!」という、同率5位でもよいくらいの3冊をご紹介させてください…! ランキングをつけるにあたり、選外にしないといけないのが本当に残念でならなかった作品たちです!
恋に至る病(斜線堂有紀)
出会いのきっかけ
キャンペーンで安くなっていたKindle Unlimitedでタイトルとジャケットを見て、とても印象的だったので読んでみました。
感想
本当に素晴らしい本に出会えた!
読み終えた時の衝撃というか、この、「え、真相めっちゃ気になる!!!」みたいな結末が本当に良いのですよね! あえて結末をハッキリさせないことでモヤモヤ感を残すのはたまにある手法だと思うのですが、この『恋に至る病』はそれが本当にクセになる感じで残る。こんなにすぐに考察を調べた作品は今までありませんでしたからね。(しかも、考察でも意見がかなり分かれているのがまた面白い…!)
ヒロインの寄河景があまりに絶対的なヒロインであり、その魅力がこの作品を際立たせているのは間違いない。実際後書きでも「これは寄河景をめぐるミステリー」と書かれていますからね。そういう意味では、僕も寄河景に恋する病にかかってしまったわけですね…!
この順位の理由
こういう真相がハッキリ描かれない作品は個人的に大好きなので、自分の中ではめちゃくちゃ刺さった作品でした。キャラの魅力もあるし、もう一度読み直してどう感じるか試してみたいとも思います。Kindleで読んだのですが、紙の本で”実態”がほしいと思うくらい愛着が湧いた作品でもあるのですが。。
今回のベスト5に選んだ本たちは、どれも「話がめちゃくちゃ面白かった+α」がある作品なのです。正直、お気に入りレベルや面白かったレベルだけなら、『恋に至る病』は今年の5本指に入るのですが、「その後の自分の生活や読書体験に影響を与えたか」と言われると「?」がついてしまうのです。なので5本指には入ることができずでした。
ですが、本当に大好きでオススメの一冊になったのは間違いないですし、とても読みやすい本でもあるので、気になる方にはぜひ読んでほしい作品です!
なめらかな世界と、その敵(伴名練)
出会いのきっかけ
『かぐや様は告らせたい』や『推しの子』で大人気の赤坂アカ先生の絵に惹かれて買ったこの本、相変わらずのジャケ買いで、しかも内容は読み始めるまで知らず(笑)。最初の一作品を読んだところで、「あ、まさか中短編集だったとはね」と気づいたレベルでした。笑笑
『なめらかな世界と、その敵』は、掲載作品のタイトルの一つです。
感想とこの順位の理由
記憶の上では、僕が読んだ日本人SFは、伊藤計劃、『ユートロニカのこちら側』につぐ作品。SFは海外作家のもの、と思っていた節があったのですが、そんな自分の先入観を打ち砕いてくれた一冊の一つになりました。
個人的には“読み終えたインパクト”みたいなのが少なく、もう少し心への刺激がほしかったのですが、それは裏を返せば、癖がなく読みやすい、ということでもあるはず。なので、SFの入門としてはとてもオススメできると感じました。
また、中短編集であるがゆえに、この一冊で様々な雰囲気の違った作品を楽しむことができますし、一作品ごとが長すぎないのも、読書をあまりしてこなかった人にとっては嬉しいポイントだと思います。
斜線堂有紀さんの解説を読んだことでの気づきも含まれますが、この『なめらかな世界と、その敵』という一冊は、“SFのなんたるか”を感じさせてくれる一冊だと思いました。SFとは「人の心をより顕著に映し出すことができる世界、そして、そんな世界での心のやり取りを描くもの」ということを、強く認識することができたと感じています。SFってついつい設定の面白さとか突拍子のなさに目がいきがちだと思うのですが、主題はそこじゃないんだよな、って感じさせてくれたのです。この気づきが、この作品を大切にしたいとさらに思えた理由でした。
👉『なめらかな世界と、その敵』の詳しいブックレビューはコチラ!
人間失格(太宰治)
出会いのきっかけ
『人間失格』も最後にご紹介する『アルジャーノンに花束を』と同じく、過去に読んだ本を再び読んでみようと思い、手に取った作品です。
当時、『人間失格』をテーマにした小栗旬が主役を演じた映画やSF風に手を加えたアニメ映画が放映されていた時期で、そもそもの『人間失格』も読まないとなこれは、と思っていました。初めて読んだ時はKindleの青空文庫だったのですが、とても面白いと思い紙の本を買い、今年は紙の本を読みました。
感想とこの順位の理由
自分が思っていた以上に内容が頭に残ってたし、そもそもの自分と作品の相性がいいのかなとも感じている作品です(まあ短いから単純に覚えているだけかもしれませんが…!笑)
考察や気づきがとても多く、僕自身も、他者や世の中、そして自分自身ついていろいろ考えて感じるところがあるからか、すごく良い本に出会えたという感覚があります。物語であり、自己啓発というか何というか、人生について考えるきっかけを与えてくれる作品だと思いました。
現代の作品にもフィーチャーされることが多いから、他の作品を楽しむためにも読んでおいて損はないと思います。
ちなみに解説を読んで、この『人間失格』は、太宰治の精神的自伝であり行動的自伝の面もあることを知りました。言われてみれば『走れメロス』だって太宰治の作品。この陰惨とした雰囲気からは想像できないのが本当にすごいですよね。
太宰治は、この世の本質に苦しめられて、傷み続けて、でも、それを誤魔化すことなく生き抜いた、か。なるほど、納得。こう言われると、自殺っていうのも何だか理由があってのことと思うし、自分は“うまく生きている”のかもしれないけれど、それもまた考えさせられるというか、一方的に誇って良いものとも思えなくなるのですよね。。
第3位 52ヘルツのクジラたち(町田そのこ)
出会いのきっかけ
本屋大賞の本としてずっと気にはなっていたのですが、僕は単行本の大きさがあまり得意ではなく、「まあ文庫本化されるだろう」と思って気長に待っており、ついに本屋さんで見つけたのが購入のきっかけ。通勤時間で本を読む身としては、やはり文庫本が読みやすいんです…。
感想
うまく言葉にはできないのですが、はじめて『アルジャーノンに花束を』を読んだ時と同じような感動があります。“人間として”大切なものは何か、美しいと思えるもの、醜いと思うもの、人間の色々な矛盾、といった“リアル”を感じつつも、そんな人間同士が一緒に生きていくのもまた、時に美しく、時に醜いよね、といったことを表現してくれているように感じました。
この本をきっかけに、じゃあ自分はどう生きていこうか、どう人と関わって触れ合っていこうか、と考えさせてくれるのです。この『52ヘルツのクジラたち』の世界で生きる人々は“美しいけど時に残酷で醜悪”で、それがまさに“人間”を曝け出しているように感じたのです。
「52ヘルツを聴ける人になりたい」、「魂の番」に憧れる。そんな感覚がきっと残るし、それが自分の生き方や価値観にいっときでも波紋を広げてくれると思います。本屋大賞っていうのは本当に頷けるなぁと、偉そうにも感じました。笑 この本は誰にでもオススメできる本なのは間違いないです!
この順位の理由
物語全体としては本当に素晴らしい作品なのですが、少々登場人物たちの過去が極端なものに寄っている感があるのがすこーしだけ気になり、すこーしだけ嫌悪感を抱いてしまったのです(個人的に、このへんが日本人作家と外国人作家の違いとも感じているのですが…)。
とはいえ、それもこの作品の魅力というか、その嫌悪感もまた“味”なのかなとも思えるのです。それくらい、終盤の流れとか、「52ヘルツのクジラたち」という題名とこの本のテーマが、人間として大切なこと、厳しいけれど美しいものを表現しているように感じられました。
第2位 Atomic Habits 複利で伸びる1つの習慣(ジェームズ・クリアー)
出会いのきっかけ
ずっと気にはなっていたのですが、すでに積読も多いしなぁと思い買うきっかけが掴めなかったのですが、、
まさかのインドのデリー空港の本屋さんに大々的に置かれているのを見て、「本当に世界的に読まれているのか、なら読むか」と思い購入しました。
感想
冒頭から早速刺さる…!
「小さな習慣の積み重ね、それは数ヶ月にとどまらず数年かかるかもしれないが、そんな積み重ねこそが、劇的な変化、大きな目標達成に結びつく」というのが、「そんなの言われなくてもわかっているよ」と思っていたのに、身に染みて“痛感した”感覚で、「すぐに行動に移そう」と思えたのです。そしてそのために重要なのが、「目標ではなく、仕組み、つまり習慣化することに集中すること」という考え方。よく考えれば当たり前かもしれませんが、こう言われることで気づき、実践しようと思うのだから不思議なものです…。
そんな冒頭から一気に読み進め、読み終えてみても、この本の素晴らしさに変わりはありませんでした。
「習慣化」をしたいと思っていたけれど中々続かないという人、何かを達成しようとしている人は、一度は読んでみるべきだと思います。それまでの“行動”ではなく“考え方”や“見方”を変えてくれるこの本は、ものすごく実用的かつモチベーションを上げてくれると思います。僕は何度でも戻って来たい一冊になりました。
この順位の理由
2023年に多くのビジネス書や自己啓発本を読みましたが、一番行動に直結しているのがこの本です。なんなら、この本を読みながらすでに実践に移していました。
それくらい自分が求めていた本だったし、「習慣化したいことがあるなら(=今の自分、今の状況の何かを変えたいなら)、とりあえずこれ読んでみて!」と手放しにオススメできる一冊です。
“読み終えた時の衝撃”が第1位の『カッコーの歌』の方があったのでこの順位ですが、「人生を変えてくるかも」と結構本気で感じている本です…!
第1位 カッコーの歌(フランシス・ハーディング)
出会いのきっかけ
タイトルと本の表紙を見て、とても印象的だったので購入。やっぱり一位もジャケ買いです!笑 タイトルも作者のことも、本当に何一つ知りませんでした。笑笑
感想
「楽な道が正しい道とは限らない。」
「確実なものなんてこの世界にはない。でも、だからこそ素晴らしい世界なのだ。」
こんなところがこの作品のテーマでしょうか。
この作品や作者のことを何一つ知らない状態で読み始めたら、主人公のトリスが感じているのと同じように、「何が起こっているんだ?」と自分も本当に感じてしまうと思います。少なくとも僕はそうでした。『エヴァンゲリオンQ』を見たことがある人なら、初めてQを見たときの感覚に近いです。笑
感想を深く語ろうとするとどうしてもネタバレありで語らざるを得なくなってしまうため、ここでは少しぼかしてお話ししますが、、
最初は本当に、陰鬱で不気味な不思議空間を漂っている感覚なのですが、読み進めていくうちに、主人公のトリスの身に起きていること、この作品の世界観が掴め、そのあたりから少しずつ物語が“動き”はじめ、気づいた頃には「姉妹と頼れる姉貴の冒険」という雰囲気になっているのだから、本当にすごいんです…!笑 そして何より、作品の真相が知れた時、結末の衝撃が凄まじかった!!
ここまで本の前後半で印象や雰囲気が変わりながら、それでいて「これは同じ作品だ」とはっきりわかるのがすごい。終盤では、それまでの様々な行動や描写の意味を“回収”していくので、その“収まりの良さ”みたいなのがとても心地よかったのも印象に残っています。
なにより、訳者あとがきにもあるのですが、キャラクターの魅力もこの作品の大きなポイントだと思います。この厚さの物語にしては登場人物が多くないため、だからこそ一人一人が輝く、役割が持てているというかんじでしょうか。
表現するのが難しい世界観だと思うのですが、描写がわかりやすいため想像がしやすく、読みやすいのもありがたいポイントですね!
この順位の理由
タイトルも作詞も知らない、表紙も初めて見る。文字通りの“ジャケ買い”だった『カッコーの歌』だったのですが、これが本当に“あたり”だったという嬉しさがまずは一つ。
そして、そんな本と出会えたということもとても嬉しいし、こういう出会いこそが“本屋さんで本を探す”ことの面白さ、紙の本の良さ、体験としての読書なのかと感じさせてくれたことが一つ。
何より、純粋に物語が面白く、特に後半の引き込まれ方が尋常じゃなかった…!
本当に久しぶりに「この人の作品をもっと読んでみたいな」と思えた一冊でしたし(自分は基本、作者を追う読書はしないので)、サスペンスやミステリーに一気に興味を持ったきっかけにもなりました。
別枠 アルジャーノンに花束を(ダニエル・キイス)
最後に、今回のランキングにおいて“別枠”という形で選んだ『アルジャーノンに花束を』を紹介します。
過去に一度読んで今年再び読んだ本だったため今回はランキングの対象外としたのですが、本来ならベスト5に入れたい一作品なのです…!
これほど「読んでよかった」と思えた本はない
初めて『アルジャーノンに花束を』読んだとき、僕は生まれて初めて「本を読んで泣きそうになる」という経験をしました。それくらい物語として感動的で、メッセージが感じられて、しかも“本ならではの表現方法”がされていることに衝撃を受けた作品でした。
それ以来の数年ぶりの『アルジャーノンに花束を』だったのですが、正直、初めて読んだ時ほどの衝撃はありませんでした(一回目があまりに衝撃的すぎたというのは間違いない笑)。それでも、「人間として大切なことは何か」ということが、白痴から天才へと変貌したチャーリィを通じてリアルに描かれているのが本当にすごい。
何より、ラストはやっぱり感動。「本で泣ける」という評価は変わりません。とにかくラストまで読んでほしいと心から思う作品なのです。
2023年のベスト本 トップ5+アルファ まとめ
ということで今回は、今年一年の読書生活のまとめとして「2023年のベスト本 トップ5」をお届けしてきました!
今年読んだ本の総数は46冊、うちトップ5と+αをご紹介しました。
気になる本があったという方は、ぜひお手に取ってみてください。そして2024年も、一緒に読書を、本の世界を楽しんでいきましょう!
今年読んだ本一覧
Notionで作成している本棚で、今年読んだ本一覧を作詞しました。よろしければご覧ください!
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