みなさんこんにちは! 小説などのレビューを行っている旅狼のレビュー小屋です!
今回は、フランシス・ハーディングの『カッコーの歌』のブックレビューをお届けします!
個人的には、2023年に読んだ本で最も「読んでよかった」と思った本。物語としてとても面白いのはもちろん、心に得られるものもとても多い小説でした。
そんな『カッコーの歌』について、あらすじや感想、おすすめポイント、読むべきかどうかなどを、ネタバレなし・ネタバレありそれぞれの視点でご紹介していきます。『カッコーの歌』が気になっている方、どんな話か気になっている方などは、ぜひこの記事を参考にしてみてください!
『カッコーの歌』のあらすじと感想
まずは、『カッコーの歌』の内容やあらすじ、気になる感想についてお話ししていきます。
あらすじ
ー あと七日 ー
意識を取りもどしたとき、耳もとで笑い声と共にそんな言葉が聞こえた。
頭が痛い……。わたしは……わたしはトリス。昨日池に落ちて記憶を失ったらしい。少しずつ思い出す。母、父、そして妹ペン。ペンはわたしをきらっている、憎んでいる、そしてわたしが偽者だと言う。なにかがおかしい。破りとられた日記帳のページ、異常な食欲、恐ろしい記憶。そして耳もとでささやく声。「あと六日」。わたしに何が起きているの…?
大評判となった『嘘の木』の著者が放つサスペンスフルな傑作。英国幻想文学大賞受賞、カーネギー賞最終候補作。
率直な感想
この本を買った理由は、タイトルと本の表紙を見てとても印象的だったからです。タイトルも作者のフランシス・ハーディングのことも、本当に何一つ知りませんでした。笑
そんな『カッコーの歌』、読み終えてみたら「出会えてよかった!」と心から思えた作品でした! 何といっても「2023年に読んだ本トップ5」における堂々の第1位でしたからね!!
ネタバレなしの感想
感想を深く語ろうとするとどうしてもネタバレありで語らざるを得なくなってしまうため、まずはざっくりと感想をお話しします。
まず、この作品や作者のことを何一つ知らない状態で読み始めたら、主人公のトリスと同じように「何が起こっているんだ?」と本当に感じてしまうはず。少なくとも僕はそうでした。『エヴァンゲリオンQ』を見たことがある人なら、初めてQを見たときの感覚に近いです。笑
そんな謎めいた状況から始まり、雰囲気も陰鬱で不気味な不思議空間を漂っている感覚なのですが、、読み進めていくうちに、主人公のトリスの身に起きていること、そしてこの作品の世界観をだんだんと掴めるようになり、そのあたりから少しずつ物語が“動き”はじめます。そして気づいた頃には「子どもの姉妹と歳の離れた頼れる姉貴の冒険」という雰囲気になっているのだから、本当にすごいんです…!
これも読んでみたら感じてもらえるはずなのですが、この『カッコーの歌』は物語の前後半で印象や雰囲気がかなり変わります。それでいて「これは同じ作品だ」とはっきりわかるのです。これが個人的には特にすごいことだと感じています。
終盤では、それまでの様々な行動や描写の意味を“回収”していくので、その“収まりの良さ”みたいなのがとても心地よかったのも印象に残っています。
なにより、訳者あとがきにもあるのですが、キャラクターの魅力もこの作品の大きな推しポイントです! この厚さの物語にしては登場人物が多くないため、だからこそ一人一人が輝く、役割が持てていると感じました。
表現するのが難しい世界観だと思うのですが、描写がわかりやすいため想像がしやすく、読みやすいのも素晴らしいです。
『カッコーの歌』のこんなところがおもしろい!
『カッコーの歌』のおもしろい点、おすすめポイントは次のとおりです。
・最初の、どこか鬱蒼とした不気味な雰囲気から、気づいたら、とても力強く溌剌とした雰囲気に展開している。純粋に物語が面白く、特に後半の引き込まれ方が尋常じゃなかった…!
・本当に久しぶりに「この人の作品をもっと読んでみたいな」と思えた一冊でしたし(僕は基本、作者を追う読書はしないので)、サスペンスやミステリーに一気に興味を持ったきっかけにもなりました!
ネタバレありの感想
ではここから、軽いネタバレありの感想をお話しします。
!これより先にはネタバレがあります!
全体としての感想と評価
「楽な道が正しい道とは限らない」
「確実なものなんてこの世界にはない。でも、だからこそ素晴らしい世界なのだ」
こんなところがこの作品のテーマでしょうか。
ネタバレなしの感想にも書きましたが、トリスタ(偽トリス)の正体を知り、現実世界にファンタジーが織り交ぜられた世界なんだと気づくまでは、本当に陰鬱で不気味な不思議空間を漂うことになります。ただ、トリスタがペンを追って映画館へ行くところから少しずつ物語が“動き”はじめ、気づいた頃には「姉妹の冒険物語」みたいな雰囲気になっているのです。
物語の雰囲気がガラッと変わりながら、しっかりとその変わり方を感じることができ、前後のつながり方もとてもスムーズ。終わってみたら、前半の謎もしっかりと解けている、と。物語の”収まりの良さ”みたいなものも、これまで読んできた作品の中でもトップクラスだと感じました。
表現のわかりやすさ、読みやすさもあると書きましたが、唯一、“怪物”たちの顔や服装はわかりにくいところもありました。それでも、その他の情景はとてもわかりやすく、「初めての本格的な長編」という方にもオススメできると感じました。
読み手の年齢や立場によっても感想が変わるかも
『カッコーの歌』はトリスタ(トリス)の視点で描かれており、彼女が父や母、妹にどのような感情を向けているのか、あるいは彼らの表情や振る舞いからどんなことを読み取っているかが、とてもリアルに描かれていました。
個人的にはそこから、父と母の大きさ、子を育てるということの繊細さと大変さというのが、なんだか身に染みて感じました(笑)。家族を持つこと、そもそも家族とはどういうものなのか、というのもしみじみと感じられましたし、自分の人生や将来を見つめ直す時間にもなりました。
この物語の趣旨とは逸れるかもしれませんが、そんなことまで得られる一冊です。読む年齢や立場によって感じ方も変わるかもしれません。
『カッコーの歌』の名言や要約
では、『カッコーの歌』で個人的に気に入った名言、内容の要約をご紹介します。
盲信は恐ろしい結果を招くということを忘れないように、いまのこれをつけているんですよ
p84
物事がいちばんはっきり見えるのは、いつだって人目につかない側からだ。背後から世界にしのびより、気づかれずに見る、そうすれば、真の姿が見える——
p133
『カッコーの歌』の基本情報
最後に、『カッコーの歌』の基本情報です。
【原題】Cuckoo Song
【著者】フランシス・ハーディング
【作品ジャンル】ファンタジーサスペンス
【出版社】創元推理文庫
まとめ
ということで今回は、フランシス・ハーディング『カッコーの歌』のブックレビューをお届けしてきました!
不思議な世界観から徐々に明らかになっていく真実、そこからの大展開は、きっとあなたの心を、時に怖がらせ、時に驚かせ、時に興奮させるでしょう。
僕個人の「読書体験」という面でも、タイトルも作詞も知らない、表紙も初めて見る。文字通りの“ジャケ買い”だった『カッコーの歌』ですが、本当に“あたり”だった一冊です。そして、そんな本と出会えたということもとても嬉しいし、こういう出会いこそが“本屋さんで本を探す”ことの面白さ、紙の本の良さ、体験としての読書なのかと感じさせてくれた本でした。
『カッコーの歌』が気になっていたという方、この記事を読んで気になったという方は、ぜひお手に取ってみてください。そして、新たな本の世界へと飛び込んでみてください。それくらい、僕は手放しにオススメしたい一作品です!
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