日本SFならこれから読め!伴名練『なめらかな世界と、その敵』の感想・あらすじ・解説・要約

伴名練『なめらかな世界と、その敵』は面白い?読むべき?感想・あらすじ・解説・要約・おすすめポイント

みなさんこんにちは! 小説などのレビューを行っている旅狼のレビュー小屋です!

今回は、伴名練さんの『なめらかな世界と、その敵』をご紹介していきます。

赤坂アカ先生の表紙の絵と赤のインパクトに惹かれてジャケ買いした一冊。日本SFを代表する一冊とも言えるこの中短編集を実際に読んでみると、「読んでよかった」と思えた作品でした。あらすじや感想、要約や解説、おすすめポイントなどをまとめていきますので、『なめらかな世界と、その敵』が気になっている方、読むべきか迷っている方、どんな内容なのか知りたい方はぜひ参考にしてみてください!


『なめらかな世界と、その敵』の構成と感想

伴名練『なめらかな世界と、その敵』の構成・感想

まずは、『なめらかな世界と、その敵』の内容やあらすじ、気になる感想についてお話ししていきます。

構成

『なめらかな世界と、その敵』は、6作品が掲載されたSF中短編集となっています。伴名練さん個人のものとは思えないほどバリエーションに富んでいるのが、個人的には大きな特徴だと感じました。

率直な感想

ジャケ買いのめ相変わらず内容は読み始めるまで知らず、まさか中短編集だったとは…、というところから読み始めた一冊でしたが、とても良い作品に出会えました!

斜線堂有紀さんの解説を読んでさらに理解が深まったというのもあり、言葉を借りれば“繋がり”と“隔たり”を描くのが上手なんだと感じました。

“SFとは何たるか”を感じさせてくれた

斜線堂有紀さんの解説も込みではありますが、『なめらかな世界と、その敵』をすべて読んで、SFとは「人の心をより顕著に映し出すことができる世界、そして、そんな世界での心のやり取りを描くもの」ということを認識できました“SFのなんたるか”に気づくことができた、そんな感覚です。

この感覚、今まで様々なSFを読んできたことを振り返ると、「言われてみれば確かにそうだよな…!」とめちゃくちゃ腑に落ちているのです。SFって、ついつい設定の面白さとか突拍子のなさに目がいきがちですが、主題はそこじゃないんだよな、って。

SFと言われると、宇宙ものだったりゴリゴリの近未来ものをイメージしますが、それは海外作家が描くSFの印象が強いからなのかもしれません。

対して日本人SFは、僕たちが生きている今、この現代の延長に、フィクションだとわかる設定が乗っかっているこれがむしろ、より身近に感じられる舞台になっていて、だからこそ、いいなぁ、とか、逆に、大変そうだなぁ、とか、そういうのを感じやすくて、作品から考えさせられるものもあるのかもしれないそしてその中に、人と人の心のやり取りがある。むしろ実は、そっちがメインだったりする。

心のやり取りがメインっていうのは海外のSF作品もですが、『なめらかな世界と、その敵』を読んで、そんな心のやり取りこそが、SF小説における本当に大切な”物語の核・本質”なのかもしれないと気づけたのです。「人と人の心のやり取りをより顕著にするための”舞台”がSF小説」であり、「”人と人の隔たりと繋がり”を”SFという舞台”で描いている」ということなのかと、感じさせてくれたのです。

SF初心者の方へオススメしたい

少し難しいことを書いたかもしれませんが、『なめらかな世界と、その敵』の各物語は、最初はイメージがつきにくくても、設定や雰囲気が理解できるよう話が流れていきますし、一度掴めればイメージしやすい作品だと感じました。

なので、『なめらかな世界と、その敵』はSFの入門として読みやすいし、SFをあまり読んだことがない人、読者初心者にもオススメしたい本です。中短編集なので、この一冊でかなり雰囲気の違った作品が手軽に読めるのも、入門者にオススメできるポイントですね!

僕個人としても、掲載6作品のどれもがとても好きな作品になりました。『ゼロ年代の臨界点』では日本SFの偽歴史をあたかも本当のように語っていてある意味“これぞフィクション”ってかんじだし、『ホーリーアイアンメイデン』、物語のすべてが“手紙の文面”っていうのもありそうでなかなかないし、それでいて作品としてもおもしろいっていうのがすごいし。この一冊を読めば、一つはお気に入りの作品が見つかることは間違いないと言えますよ!


お気に入りの掲載作品のあらすじ・要約・感想

伴名練『なめらかな世界と、その敵』_お気に入りの掲載作品のあらすじ・要約・感想

では、『なめらかな世界と、その敵』を代表して、個人的に気に入った作品のあらすじや要約、感想や名言をご紹介します。掲載されている作品の雰囲気や得られることを感じていただければと思います!

『なめらかな世界と、その敵』

並行世界(パラレルワールド)を自由に行き来することができるという世界、という設定。”好きなときに好きな世界の自分”になれる。嫌なことがあったらすぐに他の世界の自分に逃げればいいし、気分が赴くままに好きな世界に行けばいい。仮に失敗してしまっても、別の世界が山のようにある。

そんな世界において、事故によって一つの世界しか持たなくなったマコトと、ある世界でマコトの親友である葉月。“自分を生きる”とはどういうことなのかを感じさせてくれる作品であり、もっと続きが読みたいと思うくらい良い作品、好みの作品でした。

たった一つの明日は、きっと今日よりずっと、暑くなる。

『美亜羽に贈る拳銃』

脳にインプラントを施すことによって、事実上、感情をコントロールできるようになった世界。そんな世界で、「自分とは?」「あなたとは?」ということを問い、「愛すること」を問う。

主人公の実継はインプラントを施しても無効化されてしまうという体質であり、これがまた良い味を出しています。また、他の人は信じられないような、そんなインプラントが効かないことを、「自由」と表現しているのも、なんともSFらしい皮肉のきいているポイントだと感じました。

「自分の頭で考えること」「自分の感情を大切にすること」、さらには「自分とは何か」という現実への問いかけが、作品の雰囲気は決してSFっぽくないのに、明確にSFを感じさせてくれました。脳や感情をテーマにした、とてもおもしろい作品でした。

ちなみにヒロインの「美亜羽」は、日本SFの巨匠とも言える伊藤計劃の名作『ハーモニー』のヒロイン「御冷ミァハ」のオマージュだそう。確かに、脳や感情がテーマというのも『ハーモニー』につながるところがあります。

個人的に一番印象に残っているのは、「今日の自分と明日の自分が同一人物だとどうして言い切れるんですか?」という問いかけですね。

自分の趣向を自由に変化させることができる”インプラント”を入れていなくても、今の世の中、何かのきっかけ一つで、あるいは、単純に月日が経つことで趣向や性格は変わるもの。そして、変わった人間が、果たして同じ人間と言えるのか。これはとてもおもしろい視点だと感じました。こんな状態を、ヒロインの美亜羽は「あいまいな『あなた』の連続」と表現しているのも面白いポイントです。こういう視点になれるのが、やっぱりSF作家さんのすごいところだとも思いますね…!

2作品で真逆のことを表現している

『なめらかな世界と、その敵』では「明日は今日と繋がっている」みたいなことを描いているのに対し、『美亜羽に贈る拳銃』では「今日と明日の自分は違うかもしれない」ということを描いており、ある種真逆のことを語っています。

この2作品が掲載されていることに意味があるのかは分かりませんが、こういうふうに、さまざまな作品をすぐに比べられる中短編集ならではの楽しみ方ができるのも面白いポイントですね!

『シンギュラリティ・ソビエト』

シンギュラリティ(技術革新)、すなわち、自律的な人工知能(AI)が自己フィードバックによる改良を繰り返すことで人間を上回る知性が誕生する、という技術的特異点が、ソビエトに起こったら、というifを舞台にした物語。

脳の一部をAIの演算処理のために明け渡す、生まれた時にナノマシンを打ち込まれる、そんな“究極の社会主義・全体主義”と、「資本主義社会が勝利した現実を味わえる」というAIに支配された電脳世界。この2つ世界を対比しているところに、すでに痛烈な皮肉や風刺があるように思える。「”描かれた資本主義”のどこに、”資本主義”があるのだろう」と。

最後の最後がとても難解でしたが、機械・AIに支配された世界と、その対比としての理想の電脳世界。この2つによって現代にも通じる問いかけを感じさせてくれるのが、いかにも”SFらしい”作品だと感じました。


『なめらかな世界と、その敵』のおすすめポイント

伴名練『なめらかな世界と、その敵』はどんな人におすすめ?ポイントは?感想・あらすじ・解説・要約

・様々な雰囲気の日本人SFを読むことができる。
・読みやすいSF小説がたくさん掲載されている。
あなたもお気に入りの作品がきっと見つかるはず!

こんな人には特にオススメ!

・あまりSFを読んだことがない人、あるいは、初めてSFを読む人
・長い作品だと飽きやすい人
・そもそも読書に慣れていない人


『なめらかな世界と、その敵』の基本情報

最後に、『なめらかな世界と、その敵』の基本情報です。

【著者】伴名練

【作品ジャンル】SF(サイエンス・フィクション)

【出版社】ハヤカワ文庫


まとめ

日本SFならこれから読め!伴名練『なめらかな世界と、その敵』の感想・あらすじ・解説・要約

ということで今回は、伴名練『なめらかな世界と、その敵』のブックレビューをお届けしてきました!

日本人のSFもおもしろいな」という感想、何より「SFの本質」みたいなものを感じさせてくれました。これから大切にしていきたい一冊になったのは間違いありません。

きっかけは何であれ(もちろんジャケ買いでも笑)、きっとあなたに新しい価値観やものの見方、読書体験を与えてくれるはず。『なめらかな世界と、その敵』、気になる方はぜひお手に取ってみてくださいね!


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