小説『ジキルとハイド』のあらすじ・要約・考察・意味をわかりやすく紹介!

原作小説『ジキルとハイド』のあらすじや要約、考察や意味、翻訳のおすすめポイントをわかりやすく紹介!
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みなさんこんにちは! 小説などのレビューを行っている旅狼のレビュー小屋です!

今回は、ロバート・L・スティーブンソンの小説『ジキル博士とハイド氏』をご紹介していきます。

「ジキルとハイド」で知られる、二重人格を題材にした世界的に知られた名作です。ゲームのキャラクターとして登場したり原作としてミュージカルとなっていたり、解離性同一性障害代名詞として「ジキルとハイド」が症候群として使われることさえあるほど、影響力のある作品なのです。

今回はそんな一度は読んでおきたい『ジキル博士とハイド氏』について、あらすじや要約、感想や評価、意味や翻訳のおすすめポイントを中心にご紹介します。「ジキルとハイド」が気になっているという方はぜひこの記事を参考にしてみてください!


『ジキル博士とハイド氏』のあらすじと感想

原作小説『ジキルとハイド』のあらすじ・感想

まずは、『ジキル博士とハイド氏』の内容やあらすじ、気になる感想についてお話ししていきます。

あらすじ

ロンドンで弁護士業を営んでいるアタスンは友人のジキルから遺言状を預かっていた。自分が死亡、3ヶ月以上行方不明もしくは不在だった場合、恩人であるハイドに全財産を譲渡するという内容のものである。

不審に思ったアタスンは、憎悪を抱かせるハイドを調べようとするものの、ジキルに止められてしまう。その後、街で殺人事件が発生してーー。

人間は一者ではなく二者からなるものである…。善悪の二面性に焦点を当てた世界的名作。

率直な感想

二重人格を題材にした『ジキル博士とハイド氏』、他の作品やキャラクターそのものとしても登場することがありますよね!

そんな『ジキル博士とハイド氏』は、二重人格の“コインの表裏”のようなジキルとハイドを通じて、「人間の善悪とは何か」をテーマにした作品だと感じました。

人は誰しもが善と悪との二面性を持っているし、なんなら人格を使い分けて生きているもの。それを改めて強く感じました。それが良い悪いとかではなく、そういう面があるよね、と受け入れられるかどうかが大切なのではないかと、個人的には感じました。

簡単な考察

そういう意味では、ジキルほどに悩むものなのだろうか、と正直感じた部分はありました。(まぁ諦めている節も少しありますが笑、)世の中をうまく生きていくにはある程度の“表と裏”“複数の顔”というものを使い分けないといけないだろうし、それを割り切って受け入れないといけないと個人的には思うのです。理想の一面だけで生きていける人間が、果たしてこの世の中にどれくらいいるのでしょうか?

でもだからこそ、理想的な自分だけで生きていくことがどれほど難しく理想なのかわかるからこそ、ジキルの悩みに共感するし、ジキルが魅力あるキャラクターになるのではないでしょうか。


『ジキル博士とハイド氏』はこんな人にオススメ

小説『ジキルとハイド』のあらすじ・要約・考察・意味をわかりやすく紹介!おすすめの人・読むべきか

感想と考察をまとめた上で、『ジキル博士とハイド氏』はこんな人にオススメです!

・『ジキル博士とハイド氏』が気になっていた人
・『ジキル博士とハイド氏』に興味を感じた人
・手軽だけど読み応えがある作品を読みたい人


ここからは、より踏み込んだ感想や『ジキル博士とハイド氏』の紹介をしていきます!

感想・考察・作品の意味をまとめると…(ネタバレあり)

小説『ジキルとハイド』のあらすじ・要約・考察・意味をわかりやすく紹介!結末・ネタバレありの感想と内容

では、ここまで簡単にまとめた『ジキル博士とハイド氏』について、感想と考察をネタバレを含めつつ深掘りしていきます。

!この先ネタバレを含みます!

僕はこの『ジキル博士とハイド氏』を通じて、「理想的な善性も、邪悪とも思える悪性も、自分の中にあるのならそれを受け入れて抱えて生きていかないといけないんだ」というある種の教訓があると感じました。

また、「善と悪とでは、悪の方が強い」という皮肉にも近いもの、あるいは作者スティーブンソンの性悪説じみたメッセージも感じられた気がしました。

悪性の塊であるハイドは形作れるのに、ジキルは依然として善と悪との二面性に悩む人間のまま。そして悪側の誘惑に負け、最後にはハイドが体の主になってしまう。「人間はつまるところ、善と悪とを両方抱えないといけないものなのだ」と言われているようにも思えるのです。

二重人格という表現をしていますが、“作られた二面性”という点は、皮肉や教訓の意味を大きなものにすると思います。そういう意味でも、この作品は本当に面白いというか、“深い”作品だと感じます。

本そのものは薄くページ数は多くないのですが、『ジキル博士とハイド氏』は読書初心者にはあまりオススメできない気がしました。個人的には、ある程度本を読むことに慣れて、本の内容を感じ考えられるようになって読んだ時が、この本の本当の価値を受けれるタイミングな気がします。とはいえ、読み始める心理的ハードルが低いのに、物語は深いというのはとても嬉しいポイントだと思います!

ちなみに、訳者のあとがきには、少なくとも僕は読んでいてまったく思いもしなかった考察が書かれていて、人によってこのあとがきの捉え方を知ることで、物語の見え方が変わるのではないかと思います。


『ジキル博士とハイド氏』の名言や要約

小説『ジキルとハイド』のあらすじ・要約・考察・意味をわかりやすく紹介!名言・意味・言いたいこと

では、『ジキル博士とハイド氏』で個人的に気に入った名言、内容の要約をご紹介します。

詮索することについて

「あれこれ詮索するのはどうしても好きになれんのさ。まるで最後の審判のまねごとでもしているみたいだからね。詮索をひとつはじめるというのは、石ころをひとつ転がすようなものさ。静かに山の上に座って石ころを転がすと、そいつが転がっていくのにつられて他の石も転がり出す。そして、(こちらにしてみれば顔も名前も知らんような)どこかの人の良いご老人が自宅の裏庭で石に打たれて死に、家族は名前を変えて生きていくはめになってしまう。そんなことがあってはならんから、僕はこいつを戒めにしているんだよ。怪しげに見えるものほど詮索することなかれ、ってね」

p14

これは詮索することに対する云々というよりは、表現の仕方が面白いと感じたところですね。

善と悪の両者が一つの人間の中にあるということについて

人間は最終的に、多種多様かつ調和することのない独立した居住者たちの単なる集合体として認識されるようになるだろう。私はといえば生まれ持った性分から、ひとつの方向のみを、ただひとつの方向のみを目指して邁進してきた。その結果、私は道徳的側面と私自身の内面に、人間が持つ完全かつ根源的な二重性を見出すに至ったのだった。そして、私は気付いたのだ。この意識の中でせめぎ合うふたつの本質のどちらが本当の自分なのかをはっきりと把握できるのだとしたら、それは根本的に私がその両者だからに過ぎないのだと。私はずっと昔、まだ自分の科学的発見がこのような奇跡の可能性を示すよりも遥かに昔から、善と悪の分裂という考えをこよなく愛し、愛する白日夢として耽るようになっていた。私は自分に問いかけた。もしそれぞれの人格を別の肉体に棲まわせることができたなら、人生はあらゆる堪え難き苦しみから解放されるのではないだろうかと。悪しき人格は清らかなる双子のかたわれが抱く大志や自責の念から自由になり、好きに生きていけるようになるだろう。そして善の人格は自らが歓びとする善行を積みながら、己とは相容れぬ悪の人格がもたらす恥辱や悔恨にさらされることもなく、一心に、脇目も振らずに気高き道を歩んでいくことができるだろう。この、互いに調和することのない二本の薪がひとつにくくりつけられていることこそーー苦しみに満ちた意識の子宮の中で両極端の双子が延々とせめぎ合いを続けなくてはならないことこそ、人類にかけられた呪いなのである。

p105

この部分と前後でジキルが人間の二面性・多面性について語っているのですが、この考え方がとても面白いのですよね。「善と悪の両者を完全に独立した個性として分離させる」という発想、なかなか出ないと思うのです。そしてそれこそが、この作品がとても深くなるためのポイントなわけですね。

運命や人生という重荷をどう扱うか

運命や人生の重荷というものは永遠に人の両肩から降ろすことができぬものであり、それを振り落とそうと試みたところで、さらに得体の知れぬ恐ろしい重圧を持って戻ってくるだけなのだ…

p106

これはとても深い考察のように思います。自分の運命や人生はずっしりとのしかかる重荷ではありますが、それを捨てようとするとさらに重くなる。逃げようとするほどかえって大変な目に遭うということですよね。結局、自分の人生や運命には向き合うしかない、というメッセージを感じます。

悪であろうと、活き活きとした魂の像であることの皮肉

ジキルの表情に善が輝いていたのと同じように、ハイドの顔はくっきりと色濃く悪に染まっていたのだった。そのうえ悪の肉体には(今もなお私は、悪とは人の破滅的側面であると確信しているが)奇形と衰弱の刻印が確かになされていた。だが鏡に映ったその醜き偶像を目にしても、私は嫌悪を覚えるどころか、歓喜に胸を躍らせたのだった。これも、私自身の姿なのだ。いかにも自然で、人間らしく思えた。それまでは自分の顔を見ても不完全で二面的であるように思っていたのだが、こちらの顔はより活き活きとした魂の像であり、より一面的であるように思えた。このことについては、私は完全に正しかった。私がエドワード・ハイドのうわべを纏うと、人は誰ひとり近づこうとせず、怯えた表情をありありと浮かべてみせるのである。これは私が考えるに、我々が行き交うすべての人間は善と悪とが混在した存在であり、エドワード・ハイドだけが人間社会の中でただひとり、純然たる悪だからだろう。

p109-110

純粋な”悪”であったのしても、「活き活きとした魂の像」となったハイドの顔がむしろ人間らしいというのは、とても皮肉が効いているところですよね。まさに、自分の魂に素直になった結果、ということであり、人は自分の魂の形を誤魔化している、とでも言いたいような場面にも感じます。とても面白いですよね!

ハイドとジキル

そのようにして今や私はふたつの人格とふたつの容姿を持つようになったわけだが、一方が完全無欠の悪であるのに対し、もう一方は私が矯正も改善もすでに諦めきっていた調和することのない複合体、要するに相変わらずのヘンリー・ジキルその人なのであった。

p111

善よりも悪の方が明確に顔を出しやすいという、人間の性みたいなことを表現しているように思えます。そしてこれこそが、この作品最大のメッセージなように感じます。


『ジキル博士とハイド氏』の基本情報

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最後に、『ジキル博士とハイド氏』の基本情報です。

【原題】Strange Case of Dr Jekyll and Mr Hyde(ジキルとハイド)

【著者】ロバート・ルイス・スティーブンソン

【作品ジャンル】中編怪奇小説

【出版社】角川文庫

今回ご紹介した角川文庫の『ジキル博士とハイド氏』は、田内志文さんの訳でした。読みにくいと感じた場所はまったくなく、読みやすかったのもおすすめできるポイントです!


『ジキル博士とハイド氏』 まとめ

ということで今回は、ロバート・スティーブンソン『ジキル博士とハイド氏』のブックレビューをお届けしてきました!

“二重人格が題材の物語”と一言では片付けられない、そんな深みと重みがある作品だと個人的には感じている、とても良い一冊でした。

気になっている方はぜひ、『ジキル博士とハイド氏』をお手にとってみてください。きっとあなたも、様々なことをこの物語から感じられると思いますよ!


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コメント

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